あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、年末(2022年12月28日)の本コラムで触れました経済産業省の「公正な買収の在り方に関する研究会」の第2回会議において、SBIグループによる新生銀行(現 SBI新生銀行)の買収に関するプレゼンテーション資料が掲載されています。いわゆる「持株会社」(詳細は後述します)が銀行の議決権の過半数を取得するには銀行持株会社の認可の取得が必要なことから、当該資料に記載の通り、SBIグループはTOBでは新生銀行の過半数の議決権までは取得せず、TOBから約1年後の2022年10月にSBI地銀ホールディングスが銀行持株会社の認可を取得した上で、同銀行の議決権の過半数を取得しています。
この銀行持株会社の認可ですが、銀行法上、「持株会社」が銀行の議決権の過半数を取得する際に必要となります(銀行法52条の17。なお、銀行法の当該条文では、「銀行を子会社とする持株会社」とされていますが、銀行法上、「子会社」とは議決権の過半数を保有する他の会社のことを言い(銀行法2条8項)、議決権割合のみが考慮され、議決権以外の実質的な支配力は考慮されません。)。そして、銀行法上、「持株会社」とは、国内の子会社の株式等の取得価額の合計額の総資産の額に対する割合が100分の50を超える会社とされています(銀行法2条12項)。
よって、いわゆる純粋持株会社が銀行の議決権の過半数を取得しようとする場合には、この銀行持株会社の認可を取得することが必要となります。銀行持株会社には、業務範囲規制や大口信用供与規制、また利益相反管理体制の整備義務等が、概ね銀行に準じた形で適用されるため、その認可の取得は容易ではありません。SBIグループでもすぐには取得できず、TOBから1年近くの時間をかけたということなのだろうと思います。
また、買収用のSPCを利用して銀行の議決権の過半数を取得しようとするような場合、他に資産を有さないSPCは「持株会社」の定義に通常該当してしまい、そして、単なるSPCでは上述の規制要件を充足せず銀行持株会社の認可を取得できないため、結論として、買収用SPCをストレートに利用することはできないということになってしまいます。
なお、上述の銀行法上の持株会社の定義(国内の子会社の株式等の取得価額の合計額の総資産の額に対する割合が100分の50を超える会社)からは、一般的な意味での純粋持株会社であっても、海外に積極的に投資しており海外の会社の株式等の保有額が相応に大きいため、「国内の」子会社の株式等に限ればその取得価額の総資産に占める割合が過半数に達しない場合、銀行法上の持株会社には該当せず、結果として、銀行の議決権の過半数を取得する場合に、銀行持株会社の認可までは必要ないということもあり得ることになります(但し、この場合も銀行主要株主の認可の取得は別途必要となります)。なんとなく釈然としないところもありますが、銀行法上の持株会社の定義が独占禁止法上の定義を踏まえて設けられたとのことで、このような規律になっているようです。